その板の連載小説

明日のあなたへ

1話ずつ、ゆっくりお読みください。

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振り返り / 全12話予定

第1〜6話の振り返り

折り返しに、ここまでのお話を。 『明日のあなたへ』は、全12話で完結する物語です。 公開中の第6話で、ちょうど折り返しになりました。 ここで一度、登場人物と、これまでの出来事を振り返ります。 ※第1〜6話の内容に触れています。これから本編を読まれる方は、ご注意ください。 * ■ 始まりは、最後のクリームパン 寝る前に、その板を読む。 一度も書き込んだことのなかった「私」は、ある夜、不思議なお願いを見つけます。 〈明日、駅前のパン屋で、最後のクリームパンを譲ってください。〉 翌日、「私」は本当に、最後のクリームパンをおじいさんに譲りました。 それを報告するため、初めて掲示板に書き込みます。 ところが、相手の投稿の日付は、明日になっていました。 ■ パンを届けたかった相手 おじいさんには、入院を経て施設へ移った妻がいました。 「家に帰りたい」と言われても、まだ一人では迎えられない。 そう思うと会いに行けず、駅まで来ては引き返していたのです。 クリームパンを買えた日、おじいさんは妻のもとへ向かいました。 翌日、「私」が公園で会った二人は、パンの分け方や、お茶の時間に遅れたことで言葉を交わしていました。 その、どこにでもありそうな夫婦の会話を、聞きたい人がいました。 最初のお願いを書いた、二人の娘さんです。 ■ 時計屋の、最後の営業日 スレッドには「夜ふかし時計」さんも現れます。 四十三年続けた、ミズノ時計店の店主でした。 店主にとっては、すでに終わった最後の営業日。 けれど「私」にとっては、まだ明日のことでした。 「私」は、母にもらったまま長く止めていた腕時計を持って、店へ向かいます。 そして、店先に一枚の紙を貼りました。 〈四十三年間、ありがとうございました。 本日が最後の営業日です。 まだ開いています。〉 紙を読んだお客さんたちが、店に入ってきました。 その後、スレッドを読んだ息子の健一さんも現れます。 父と長く話していなかった健一さんは、棚を外す手伝いをきっかけに、店を訪ねました。 話そうと思っていたことは、ほとんど話せないまま。 それでも、一緒に働き、食事をして、父は「また来い」と言いました。 * ■ ここまでの、人のつながり sonoita_people.png ■ 娘さんが、聞きたかった話 最初のお願いを書いた娘さんは、離れた場所に暮らしていました。 病気で耳がほとんど聞こえなくなり、今は電話の内容を文字で読んだり、メッセージを交わしたりしています。 娘さんの心に残っていたのは、聞こえていたころ、出られなかった母からの電話でした。 何の話だったのか、母も覚えていない。 たぶん、本当に何でもない話だったのでしょう。 「私」は、公園で聞いた夫婦のやり取りを、そのまま伝えました。 〈母です。間違いなく、母です。〉 娘さんから、そんな返事が届きます。 父から届く必要な連絡だけではわからない、母の言い方や、二人の様子。 「私」が何気なく聞いていた会話は、娘さんにとって、知りたかった家族の日常でした。 ■ まだ書いていない、自分の投稿 ここで、新たな不思議がわかります。 娘さんが最初のお願いを書くきっかけになったのは、こんな書き込みでした。 〈明日、公園でクリームパンを食べている夫婦に会ったら、二人が何を話していたか、娘さんに教えてあげてください。〉 投稿者は、「私」と同じ名前。 日付は、まだ来ていない土曜日でした。 「私」は土曜日、実家へ帰ります。 母と昼ごはんを食べ、腕時計を選んでくれたときの話を聞きました。 そして、その夜。 「私」は、娘さんから見せてもらったお願いを、自分の手で書いて送ります。 すると、返信が届きました。 〈すみません。その夫婦は、私の両親かもしれません。〉 すでに話した相手が、今、初めてその話を読んでいる。 お願いを受け取った「私」が、今度は、そのお願いのきっかけを届けていました。 * ■ お願いは、輪のようにつながっています sonoita_loop.png 「私」が体験した順番では、 ① パンを譲ってほしいというお願いを読む ② パンを譲り、公園で夫婦に会う ③ 夫婦の会話を娘さんへ伝える ④ 自分も、お願いを書く となります。 けれど娘さんは、④の投稿を先に読んでいました。 このスレッドでは、書いた順番と、相手が読む順番が、同じとは限らないようです。 ■ わかっていること、まだわからないこと ここまでに起きているのは、違う日を過ごしている人同士が、同じスレッドで言葉を交わすということです。 最初に日付を確かめたとき、娘さんは「私」の一日先、夜ふかし時計さんは二日先にいました。 誰かが書き込みを読み、行動したことで、出来事が変わることもありました。 ただし、時計店の店主には、静かに一人で店を閉めた記憶も、お客さんが来てくれた記憶も残っています。 なぜ日付がずれるのか。 誰と、いつ、つながるのか。 出来事が変わったとき、何が残るのか。 その仕組みは、まだ明らかになっていません。 * 読むだけだった「私」は、パンを譲り、店先に紙を貼り、聞いた会話を誰かに伝えるようになりました。 そして、自分の母にも会いに帰りました。 不思議な出来事の合間に、何でもない会話が少しずつ増えています。 そんなスレッドに、新しいお願いが届きました。 〈三日前に、この掲示板で少し嫌なことを書いてしまいました。〉 〈消したんですが、読んだ人がいます。〉 〈その人に、謝りたいんです。〉 言葉は、日付を越えて届く。 では、一度届いてしまった言葉には、何ができるのでしょうか。 次回、第7話。 『明日のあなたへ』は、ここから後半へ進みます。
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